社会に出たばかりの人にとっては、何も知らないのに一方的に「指示待ち人間」の烙印を押されてしまう現実があります。
指導する側からすれば、確かにイライラしてくる場面もあるかもしれません。でも、その前に原因について考え、より良い方向へと変えていくように努力してみましょう。
そこで、まず「指示待ち人間」という定義と、そうなる背景について話します。そして、次に「指示待ち人間」を変革する方法について紹介していきます。
「指示待ち人間」を振り返ろう
「指示待ち人間」という用語は、マイナスの意味として使われていることが多いです。絶えることなく、使われ続けているということは、少なからず昔も今も似たところがあることの現れでしょう。
いったいどんな意味を有しており、なぜ「指示待ち人間」になってしまうのかを分析します。
そもそも「指示待ち人間」って何?
1981年にすでに広まっていた言葉ですが、指示されたことはこなすが言われるまで何も始めない新入社員を示しています。「指示待ち世代」や「指示待ち族」といった形でも広まりました。
ですから、50代半ばの方が社会人として歩み始めた頃から存在していたことになります。新入社員においては、経験値が浅く、経験を積み重ねていくにつれて、仕事の全体像を捉えることができようになり会社の貴重な戦力として活躍していくようになるでしょう。
しかしながら、入社して何年も経つのに、上司から言われるまで動かない社員は、会社の戦力としては致命的です。このような人材ばかりが増えてしまっては、会社の運営自体も厳しいものとなってくるでしょう。
若者が「指示待ち人間」に陥ってしまうのはなぜ?
いくつも考えられる原因はありますが、代表的なものを3つ挙げます。
まず、会社で使われている言葉の意味が充分に理解できていないから。
社会人なら知っていて当然という態度で新入社員への指導を行っていませんか!?意外と気付いて知れませんが、その業界だけで使われている専門用語は多いものです。
そういった背景知識もないのに説明を受けたとしても、聞き手の方はチンプンカンプンになってしまいます。
次に、仕事に慣れることに必死だから。
仕事に慣れるスピードは個人差があり、柔軟に何でもテキパキとこなせる人もいれば、時間がかかってしまう人もいます。一度にあまりにも多くのものを求めないようにして、見守っていくようにしましょう。
最後に、失敗を恐れてしまっているからです。
団塊の世代に比べて生まれ育った頃から、競争相手が少ない中で生きてきた世代です。切磋琢磨して育ってきた人もいるでしょうが、大きな失敗や挫折を経験せずに社会人としてデビューした人もいるかもしれません。
失敗や挫折をした経験があれば、次にどのように生かせばよいかが分かりますが、未知の経験に戸惑ってしまうのでしょう。
「指示待ち人間」への対処法
自分で行動できない部下に頭を悩めている人も多いかもしれません!?ちょっとした発想の転換によって、「指示待ち人間」の部下を脱却させる方法を紹介していきます。
それには部下に求めるばかりではなく、あなた自身が変わっていかなければならないところも存在します。
「I」メッセージで伝える
「どうして言われたことしかしないんだ!子どもじゃあるまいし。」というメッセージは、「You」メッセージです。
「I」メッセージで伝えるとすれば、「私は、君が支持されたことしかしないので、とても残念に思っている。」になります。つまり、メッセージの主語が何であるかによって呼称が変わるのです。
どちらの方が素直に耳を傾けることができるでしょうか!?どうしても「You」メッセージは、怒りを相手に直接ぶつけてしまう表現になってしまいます。
一方、「I」メッセージは、相手の行動によってどんな気持ちになったかを客観的に伝えている内容です。どこにも相手を非難したり、批判したりするような気持ちは表れていません。
これなら、言われた部下も素直に聞くことができ、指摘事項を理解することがでいるでしょう。
ですから、「仕事を終えたらなぜ報告をしないんだ、まったく!」ではなく、「頼んだ仕事が終われば一声かけてくれると、次の対応がスムーズにできて助かるんだが…。」という伝え方に変えていきましょう。
「いつまで資料作りに時間がかかっているんだ!」ではなく、「計画的に資料作りを進めてくれると、打ち合わせまで余裕を持って迎えることができるんだが…。」という伝え方をすればいいですね。
このような声かけを行っていくことで、怒りの感情をコントロールしながらしっかりとメッセージを伝えることができます。
安易に部下に答えを教えないこと
幼い子どもが初めて何かを自分の力でやり遂げた時、それを繰り返して大人に見せることがあります。これと同じような成功体験を積み重ねていくことが大切です。
部下が考えるのを待ちきれずに、頼まれもしないのに親切に指導をしてしまっては意味がありません。問題点の洗い出しをさせたり、自分の中で課題を消化したりする時間も必要になってきます。
もちろん、質問をされた場合は、その内容に関するアドバイスをしても構いません。初めから手取り足取りの指導をしないようにすることが重要と言えます。
威厳よりも信頼関係を築くこと
上司の役割は、部下の話に関心を持ち、耳を傾けることです。いつも叱られているばかりいると、自ら考えることを止め、上司の機嫌をうかがうようになってしまいます。
これでは「指示待ち人間」を増やしてしまう新たな要因となりかねません。上司は有能であるところを部下に見せつけるようなことは避けてください。なぜなら有能な上司みたいにはなれないと早くもあきらめの気持ちが部下に生じてしまいかねません。
ですから、部下としっかりとした信頼関係を結ぶことができれば、部下の価値観や仕事に対する取り組む姿勢が見えてくるので、どんな対応をすれば期待に応えてくれるかが分かるようになります。
まとめ
「指示待ち人間」という用語は1981年には登場し、人口に膾炙していきました。
意味している内容は、主体的に動くことが難しく、上司の指示によって動く人のことです。30年以上経った今でも色褪せていないことから、少なからずそういった新入社員が見られると考えていいでしょう。
上司の捉え方によって、これまでの関係性をガラリと変えてしまうことができます。「I」メッセージで伝えたり、必要以上の指導は避けたり、信頼関係を築いたりしていくことで、「指示待ち人間」の部下を変えていきましょう。