運動会において順位付けを行わない措置が取られるようになってきてこの頃です。確かに、法律の上では、誰でも平等であると説かれてありますが、現実はまったく異なります。
電通総研が行った「世界価値観調査」(2010)によれば、「競争は好ましい」と答えた人は77.2%の人が支持しています。一方、「競争は人間の悪い面を引き出し、有害である」と回答したのは、13.7%と少なく、調査を重ねるごとに割合は低くなってきているのです。
つまり、日本の社会において競争のマイナス面よりもプラス面に目を向けている人が多いことが分かります。そこで、「競争心」について考察しながら、競争心のない人の特徴や接し方について話していきます。
そもそも「競争心」って何で生じるの?
何をきっかけとして「競争心」は生まれるのでしょう。
「競争心」を生じさせる代表的な2つの目的について紹介します。
- ある事柄に対する劣等感に苛まれて、それを打破しようとするため
保育園に通っていた頃、私の嫌だった行事の1つは運動会です。ビリではないけれど、後ろから数えた方が早いくらいでホントに悲惨なもの。私と違って弟は足が速く、とても目立っていたので余計に憂鬱でした。
この状況は小学校に入学してからも続きましたが、こんな私でも2位をとることができたんです。スタートの位置に立った際、顔ぶれを見れば、自分の客観的な位置はすぐに分かり順位は予想できます。
しかし、陸上経験者の伯父にスタートの大切さを教えられ、フォームの見直しを行い、練習を積み重ねていたので、追いつかれることなくゴールすることができました。
- 自分の理想とする姿を追求しようとしていくため。
これは、次に示すようにスポーツ選手や芸術家に多く見られることがあります。
平昌オリンピックでコンディションが万全でない状態で、羽生結弦選手は金メダルを獲得しました。あくまでも比較対象としているのは、過去の自分であって他者ではない点は異なります。
しっかりとした自分が思い描いたものに向けて、ケガにも屈せずただひたすら挑んでいく姿にたくさんの人々が心を揺さぶられました。芸術に関しては、中学生の美術の先生が語っていたことが懐かしく思い出されます。
「美術のテストにおいて満点は付けないよ!芸術とは磨き続けるものだからね」と。おそらく現状に満足することなく、取り組む姿勢を伝えたかったのでしょう。
競争心のない人/こどもの特徴は?
「ああこんな社員、こんなこどもいるいる!」っていう分かりやすい特徴をそれぞれ2つずつ挙げました。身近な人の顔を思い浮かべながら、ご覧ください。
- 出世に興味を示さない
幼少の頃から、他者と競争せずに育ってきて、社会に出てから競争を煽られてもピンと来ないのが彼らの本音でしょう。出世すれば給与は上がるが、負うべき責任が増大して、自分のプライベートの時間を確保することが難しくなるため毛嫌いしている傾向があります。
それなら給与分並みの仕事だけをしっかりとこなして、プライベートを充実させたいという思いが強いようです。
- 指示されたこと以上のことを進んで行わない
入社して数年が経てば、年間の流れは見えてきて、どの時期に何をすべきか分かってくるはずです。しかし、業務命令で出された仕事以外は自ら意欲を持って取り組もうとする姿勢が見られません。
まして、同僚と情報を共有していい仕事をしようという気概に欠けています。
- 現状に満足し、それよりも努力をしようとしない
テスト前に勉強をせずに平均点をとれたから、俺は頭がいいんだと思い込んでしまい、誤りを見直したり、解き直したりすることは見られません。
スポーツに励んでいるこどもであれば、練習に参加しなくても、試合に出してもらえるからという理由で、天狗になってしまいレベルアップを図ることができずに終わってしまいます。
- 変なところで大人びた考えを持っている
「努力をしなさい」と言われても、「所詮は大人のキレイごと」といった感じで冷ややかに見つめているところがあります。
「めんどくさい」が口癖になってしまっており、次の行動に移るまでに長い時間を要することが多いです。
競争心のない人/こどもへの接し方は?
負けん気を育てるというものではなく、どうやって自己肯定感を持ってもらうかをポイントに話していきます。
もっと端的に言えば、向上心を持って臨めるような接し方を紹介します。
- 本人のレベルよりもちょっとだけ難しい課題を与えてみる
自分に自信があれば、難しいことにどんどんと挑戦したくなるものです。しかし、競争心のない人/こどもは、嫌われているからこんなことをさせられているとマイナスに捉えてしまいます。
ですから、ちょっとだけ難しい課題を選ぶことがポイントになります。たとえ失敗しても、できている部分をしっかりと認め、できなかった部分に対するアドバイスを行っていけば、だんだんとやる気が生まれてくるでしょう。
- 比較する対象を他者ではなく過去の自分に置く
社員であれば過去と比べてどんないい変化が見られるのかを、しっかりと本人に分かるように伝えます。こどもであれば、前はできていなかったことが、できるようになったところまでをしっかりと褒めるようにしてあげましょう。
比較する対象が過去の自分であれば、自分をより良い方向へ変えていきたいという動機付けにもなります。一足飛びにはいきませんが、大きな波も最初は小さなさざ波から起こるように、心の中に何らかの変化をもたらす機会となるでしょう。
まとめ
「競争心」は、相手がいて沸き起こる場合と、自分の軸を見つめることで生じる場合の2つがあります。
競争心のない人/こどもは、自分の目の届く範囲のことだけにしか目配りを行わず、何事も積極的に取り組むことが難しくなってしまいます。
競争心のない人/こどもに、競争は煽られるものではなく、自ら望んで挑んでいけるような関わり方をすることが大切です。
そのために、競争を向上心と置き換えて考えていけるように、前と比べてどうなったかを意識し、良くなったところを具体的に伝えるようにしましょう。