私は未婚ですから、もちろん子どもはいません。
ですが、甥や姪が誕生したことでちょっと気になっていた問題について考えるようになりました。というのも、仕事に追われているとついつい親が子どもにスマホでYouTubeを見せる場面に遭遇したからです。
確かに食い入るように画面を見つめてはいますが、こちらからの問いかけに対しては無反応という状態で…。父親や母親が動画を停めると怒り出したり、わめいたりと、大丈夫かなあと思うことは数知れず。
躾の問題は親が関わることだからと口にしたことはありませんが、親戚によって指摘を受けるハメに!
「あ~あついに、この時が来たか!」と心の中で叫び声を上げていました。ようやく母親が不安に思ったのか保育士さんに相談して、視聴回数を減らしていったようです。今では保育園から帰ると、元気いっぱい外で遊び回っています。
そこで今回は、乳児に対するテレビの影響について話していきたいと思います
テレビ視聴によって幼児脳への影響を指摘する声
日本小児学会は「乳幼児のテレビ・ビデオ視聴に関する提言」(2004年)を行っています。
1つ目は子どもへテレビやビデオを長い時間見せないこと(特に二歳以下)。その内容や視聴の方法によらず、長い間視聴している子どもは言語の発達が遅れるおそれが高くなるそうです。
同学会に属する委員会の調査によると、1日4時間以上も視聴している子どもは言語の発達に影響が出ています。実際、長時間視聴家庭の子どもは短時間視聴家庭の子どもに比べて、言葉の遅れが2倍にも達しています。
2つ目は、常に電源をつけたままにせず、見ない時はしっかりと消すこと。
視聴するだけではなく、子どもの近くでテレビが8時間以上ついている家庭においても言葉の遅れが目立ったそうです。
3つ目は、見せる場合は親も一緒に視聴し、子どもとの関わりをしっかりと持つこと。
4つ目は、授乳中や食事の時間はテレビをつけないようにすること。
5つ目は、メリハリをつけてテレビを見せること。
だらだらとつけっぱなしにせずに、テレビを見終わったら消し、ビデオは繰り返して見せないようにしましょう。早期からテレビを見た子どもの方が、テレビを見たがったり、自分でつけたりする率が高く見られました。
6つ目は、子ども部屋にテレビやビデオを置かないようにすること。
テレビ視聴によって幼児脳への影響を追った調査
お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科の菅原教授は、2003年から子どものメディア視聴について調査。対象は0歳の時からずっと変わらず、およそ1,200世帯の同じ子どもを継続的に調べています。
1週間の視聴日誌を15分単位で24時間分記録してもらい、どんな状況でテレビがついているのかなどを記録。国内外の調査を踏まえて、「テレビ番組の内容」と「視聴時間の長さ」の観点から次の2つのことが分かりました。
まず、その子の年齢に応じた教育的な内容であればいい影響があり、暴力的あるいは性的であれば悪い影響があること。映像に出てくる人物が暴力をふるっていれば、子どもたちの攻撃的な行動が増加すると言われています。
これは私にも経験があります。3歳になる甥は戦隊シリーズの番組を見た後で、敵や味方に分かれて戦いごっこをするように。子どもは手加減することを知りませんから、力任せに叩いてくるのでとても痛い思いをしました。
逆に、幼児に教育番組を見せると、その子の言語発達を促したり、想像力や判断力を高めたりするという研究結果も。次に、テレビの視聴時間の長さが子どもの発達に影響を与えるということは認められていないこと。
むしろ、絵本の読み聞かせや外遊びを通した人を介してのコミュケーションが大切と言われています。
テレビを幼児が視聴する際の時間は?
日本小児学会では、2時間以内のテレビ視聴が推奨され、4時間以上は長時間という認識です。菅原教授の調査によると、テレビの視聴時間は1歳以下で平均3時間くらい、2~5歳になると2時間~2.5時間ほど。
ただし、視聴する際は大人と一緒に見る場合が多く、子どもだけで見ているのは0~5歳で30分くらいです。ちなみに、アメリカでは2歳以下の平均視聴時間は6時間と日本の2倍近くにもなります。
たとえテレビをつけたままにしておいても、子どもはずっと見ているわけではありません。子どもは、自分の働きかけに対して何らかの反応が返ってくることに対して興味を持ちます。ですから、テレビを見ることは子どもにとっては物足りないと感じてしまうようです。
食事中のテレビについては、テレビ番組の内容が家族のコミュケーションツールとして機能しているかが重要!BGMとして流しているのではなく、親子の会話の一部としての役割を果たしているのなら問題ないそうです。
食事中にテレビがついていなくても、しっかりと会話ができているのであればあえてつける必要はありません。
テレビから幼児をガードする関わり方は?
できれば見せたくないけれど、これまでの習慣をガラリと変えてしまうのはちょっと大変かもしれません。そこで菅原教授はテレビを上手に活用して、コミュケーションツールとして扱っていくことを紹介しています。
これは、親がテレビを子どもと一緒に見ることが大前提です。
「〇〇ちゃんの洋服の色は?」、「〇〇君はなんで泣いてたの?」などの問いを投げかけるようにしましょう。すると、子どもの集中力はアップし、それに関する語彙や情報を吸収しやすくなるそうです。
親が子どもにテレビ番組を通した学びを期待するのなら、このような子どもの注意を引くような視聴が大切!また、テレビ好きな親と一緒に見る子どもは視聴時間が長くなる傾向にあると言われています。
平均的な視聴時間よりも長いと感じる場合は、自分の子どもが他にどんな遊びをしているかを確認しましょう。具体的には、起床時間や誰とどんなことをしていたかを1週間確認すると、時間の使い方を把握することができます。
外遊びの時間や絵本を読んだ時間が少なければ、しっかりと調整をかけていくようにしてください。
まとめ
幼児のテレビの視聴は、きちんとした方法で行えばコミュケーションツールとしての役割を果たします。ただし、その子の年齢に応じた内容のテレビ番組でなければ、子どもにとって悪影響を及ぼすことも。
テレビの視聴そのものが発達の遅れに関係しているのではなく、コミュケーションを通した関わり方が重要です。テレビ任せの視聴はダメですが、そばで親がしっかりと問いを発しながら見るようにしましょう。
また、視聴時間があまりにも長いと感じたら、外遊びや絵本の読み聞かせなどを通して子どもと関わってください。